「結夏ー…。
もうヤバイんじゃない??この部…。」
机に突っ伏して私の顔を見上げ、
だらしなく言ったのは、
花道部で一緒に活動する友人、菜穂。
たった5人で生花をする姿を見て、呟くように言った。
「そ、そんな事ないよっ!!
きっと、花咲くんや李紗ちゃんも勧誘頑張ってくれるし…。
ねっ!!」
「もちろん、頑張りますぇ。
先輩方が起こしたこの部…1年で台無しにする訳にはいきまへんし、
せっかく結夏さんや真琴さんが教えてくださった花道も、
まだまだやけど、上達してはいるし…。
ちゃーんと、続けますぇ。」
ニッコリと、お淑やかに微笑み、
上品な京都弁で話す彼は、
花道部唯一の男の子、1年生の花咲和賀くん。
花道部が出来た時は、まだまだな腕だった花道も、
ちょっと教えただけですぐに上達して、
今や、コンクールで銀賞を取っちゃったくらいの腕前。
「私も、色んな子に声かけて、
花道部員、増やします。
先輩たちは安心してください。」
そして満面の笑みを向けた彼女が
2年生の李紗ちゃん。
ロングヘアに赤いメガネが似合う、
おとなしくて可愛らしい女の子。
この子は、先輩のことを気遣ってくれる、
すごく優しい子。
この子がいれば、
3年生がいなくなったあとも、きっとこの部はちゃんとやっていけると思う。
すぅ、と部室を通った風とともに、
どこか心地よいような沈黙が現れる。
一つ、間を置いて、
黙々と花を生けていた菜穂が、
自分の花を見て、呟く。
「もうすぐ私たちも卒業だし、
最後に、なにか特別な花でも、
思い切って、生けてみる?」
にこ、とやさしげに微笑んで、
私と菜穂を同時に見た。
“特別なものを…か。”