「フランス軍を率いたナポレオンは一時期・・・」

先生が授業を進めていく。


「つまらーーん!!」

倉田の横の開いた窓から授業を見学中。

レイレは長ったらしい話に飽きていた。

「早く終われ!今!直ぐに終われ!」

訴えてみるがレイレは人間には見えないので意味は無い。


生徒達も集中はしておらず、携帯をいじる者や漫画を読んでいる者もいる。


一方倉田はと言うと、真面目に先生の話を聞いているようだった。

子供が初めて習うような基本の、綺麗な座り方で。


「・・・・・真面目だなぁ。」



本当に真面目だ。

あいつに抱いた初めからの印象も今とたいして変わらないようなもの。

そういう真面目な所もいいと思う、けどそれだけでなくて、笑顔も見ていたいと思う自分も居る。



ツンツンッ

ふいに倉田の後ろの席の女の子が倉田の服を引いた。

小さな紙切れを見せる。

二人は笑い合った。





倉田が笑った


見たいと思った


思っていた


あいつの笑顔


なのに、なぜだろう


胸の中に黒く重いモノが湧き出てきた



何か違う


何が違う?






この黒く重いモノに気付くのはまだ先の話。