「う〜ん…」

夏風が厚さを増す八月上旬。

境飛鳥(サカイ アスカ)はとある建物外で道に迷っていた。

「校舎から少し離れたオレンジ色の建物って言ってたけど…」

立ち止まり目の前を大きく見上げる。

「ここなのかな?」

飛鳥の前には確かにオレンジ色と言っても過言ではない橙色の建物。

大きさは大きくもなく小さくもなくって感じ。

ただ…

「汚すぎ…」

全体に錆が入って亀裂もある。

お世辞にもいい建物だとは言えない。

しかし、この建物こそが今日から飛鳥が生活する寮なのだ。