人魚であった私にしてみれば、人間の1000年などなんともない。
人魚は人間の何千倍も生きるのだから。
でも、あの方は人間だ。
1000年後、私が世に生を受けてもあの方はもういないだろう。
あの方のいない世で生きることに何の意味があるのだろうか。
神は『幸を求めよ』と言った。
けれど、私の幸は彼なのだ。それ以外に何を求めればいい?
分からない・・・・・。
何度浮かべても出てくるのはあの方で・・・。
でも、いない。
人間とは、なんとも儚いものなのだ。
神は続けた。
「幸とは形あるものとは限らぬ。また、ひとつとは限らぬ。大それたものから、小さきものまであるのだ。何でもよい。笑えば幸になる」
笑えば・・・。
本当にそうだろうか。
思えば、あの方に出会う前、私はどのように暮らしていたのだろう。
姉様たちがいて、父様と母様がいて、一緒に話をしたことがあった。
私は笑った・・・・?
幸せだった・・・・?
確かめたいと思った。
生きて、笑って、確かめようと思った。