「セシリア様よ」

「本当、いつお姿を拝見しても素敵よね」


 女たちの感嘆する声があたりに流れている。しかし、セシリアはそのようなことを気にしていない。彼女は通りからちょっと入ったところにある一軒の酒場に足をいれていた。そろそろ、客も入っているとみえてざわついている店内。その中で店主らしき人物と話している相手をみつけると、つかつかと近寄っていた。


「親父さん。雇ってくれてもいいでしょう」

「そりゃ、お前さんのような黒魔導師はほしいけどね」

「じゃあ、いいじゃない。あたしは仕事がなくて困ってるんだし」


 自分たちの話に夢中になっているのか、セシリアが近寄ったのにも二人は気がついていない。そのうちの一人の肩をセシリアはポンと叩いていた。


「あなたがミスティリーナね。ちょっといいかしら」

「急に何を言ってんのよ。あたしは、こっちの親父と話をしてるの」