「かしこまりました」


 セシリアにはそう返事をすることしかできない。王命に従うことを決めた彼女は深々と一礼すると、ウィルヘルムの前から下がっていた。

 その日から、セシリアはアルディスの行方を捜し続けている。しかし、どこにも彼女の居場所を指し示す手掛かりはない。城に所属する魔導師にも相談した彼女である。しかし、彼らからの返事がかんばしくないことに、セシリアはどうすればいいのかわからなくなったようだった。だが、だからといって何もしないでいるということが時間の無駄だということはわかっている。彼女は自分から動かないといけないということにも気がつき始めていた。


「まったく、魔導師どもも頼りがいのない。こういう時こそ、力をみせるべきだろうに」


 都の大通りをセシリアは魔導師たちへの不満を呟きながら歩くだけ。今の彼女は城内にいる時とは違い、男物の衣装を身につけている。その髪が背中あたりまでということもあってか、ちょっと見た印象では特別に性別を感じさせるものではないようだった。