セシリアの声にミスティリーナは封筒に目をやっていた。封をしてある蝋の色がオレンジ色である。これなら心配することはない、と彼女はひとまず胸をなでおろしていた。オレンジ色の封蝋は仕事の依頼である。懲戒の意味をもつ黒の封蝋でないことに気を良くしたミスティリーナは、セシリアに声をかけていた。


「あんたの話をきかせてもらうわ。よかったら、あたしの部屋に来ない」


 先ほどまでとはまるで違う様子のミスティリーナ。それに不思議な顔をしながらも、セシリアはうなずいている。二人は黙りこくったまま、宿の中に入っていた。


「そこらへんにかけてちょうだい。もっとも、客が来るなんてことないから、何もないけどね」


 ミスティリーナのその声にセシリアは適当な椅子に腰をかけている。そしてミスティリーナはギルドからの召喚状に改めて目を通していた。しかし、それには書いてあるはずの依頼内容がない。そこにあるのは、依頼主であるセシリアの名前だけ。こうなったら、本人にたずねるのが一番手っ取り早いだろうと思った彼女は召喚状をくるくると丸めると、セシリアに問いかけていた。