「あなたがミスティリーナなんでしょう?」


 セシリアのその声に、ミスティリーナはどうしてこうなってしまったのか思い出していた。もう少しで仕事を手に入れられたのに、という思いが彼女の中にはあったのだろう。ミスティリーナはセシリアに食ってかかっていた。


「一体、あなたって何様なの。あたしは仕事をしなきゃいけないの。それを邪魔する権利はあんたにはないはずだわ」


 ミスティリーナは腰に手をあて、足をトントンと踏み鳴らしながらセシリアを睨みつけている。そんな彼女の顔をセシリアは呆れたようにみつめていた。


「権利はあると思うわよ」

「何ですって! 貴族だからってそんなことできるはずないじゃない!」


 セシリアが貴族の令嬢だということはミスティリーナも知っている。しかし、たとえそうであるからといって、彼女の言うことに素直にうなずくこともできなかったのだ。そんなミスティリーナにセシリアはうんざりしたような声を投げかけていた。