自分のことではないのにあたふたと謝罪をする店主。もっとも、セシリアはそれに格別の反応をみせてはいない。しかし、一方のミスティリーナは怒りを含んだ声を張り上げていた。


「どういうわけよ。なんで、そんなこと言うのよ」


 ミスティリーナのその声に主人は返事をしようとはしない。彼はこのままミスティリーナと関わっていれば、セシリアの機嫌を損ねかねないと思ったのだろう。逃げるようにそそくさと奥の厨房に入っていっている。その姿にミスティリーナは思わず舌打ちをしている。


「ったく……どうして、こうなっちゃうのよ」


 上手くいっていると思った交渉。その相手に途中で逃げられたことに、ミスティリーナはガックリと肩を落としていた。そんな彼女の様子など気にした素振りも見せずに、セシリアは声をかけていた。