鐘の音を口実にこんなところまで連れてきてしまって。

おかしな場面に居合わせてしまって。

なんだか暗くなっている女の隣に座らせられて、さぞ居心地が悪いでしょうね。

それなのに優しく気遣ってくれて、本当に申し訳ない。

それなのに。

「……僕も、余計な真似をしてしまって、すみませんでした」

和音くんはそう言って頭を下げた。

……驚いた。

責められこそすれ、謝られることはない。

「ううん、余計なことじゃないわ。和音くんが機転を利かせてくれて助かったの。……ありがとう」

「……そうですか。余計でなかったのなら、良かったです」

それきり、会話は途切れた。

沈黙の中に流れるのは、どうどうと激しく地面を打つ重苦しい雨音だけ。

その雨音だけの空間が落ち着かない。

和音くんくらいの年代の子なら……あの人とはどんな関係なの、とか、先生振られちゃったの、とからかったりとか……するものじゃないのかしら。

なのに彼は、黙ったまま。