外へ続く階段も、その下の煉瓦敷きの道も、私が別れの言葉を呟いた場所も、みんな灰色の雨に煙って霞んでいた。

全部洗い流されていく。

私の想いも、ずっと見続けた哀しい夢も。

このまま全部、消えていくのだろうか……。


「もう少し降り続きそうね」

後ろからくる視線に気づいて、笑みを浮かべる。

もうこの優しい子に気を使わせてはいけないと、なるべく穏やかな顔を和音くんに向けて、一番後ろのベンチに座った。


本当に、迷惑をかけてしまった。

鐘の音を聞かせることももちろん目的のうちだったのだけれど。

私の気持ちに区切りをつけるために利用してしまったことへの罪悪感が、重苦しい雨音とともに募っていく。

淡い間接照明に照らされた白いバージンロード。

その先にいる穏やかな顔のマリア像を見上げ、もう一度懺悔をして。

私は、和音くんにも懺悔をする。

「……ごめんなさい。色々と……ごめんなさいね」