和音くんはまた心配そうな顔をしていた。

下の階にはもう式の余韻は残っていなかったけれど、ここのベンチの端にはまだ、白い薔薇とリボンが残されていて。

厳かな雰囲気の中行われたのであろう、式の様子が垣間見れたから。

それを見る私の心情を察してくれているのかもしれない。


──優しい子。


少年のように目を輝かせていたと思ったら、大人顔負けの気遣いを見せられて。

思わず、クスリと笑みが漏れた。

「いいえ、大丈夫よ。せっかくですもの、見学していきましょう」

言いながらまた聖壇へ目をやると、最前列に拓斗くんと花音ちゃんが座っていることに気づいた。

2人は司教様のお話を熱心に聞いているみたいだった。

それを邪魔しないように、左側にある外へ続くドアの方へ向かう。


ここから出てくる勇人さんは、本当にしあわせそうだった。

久しぶりに私を呼ぶ声は、私の知る彼のものだったけれど。

花嫁や友人たちに向けられていたあの笑顔はもう、私のものではないんだ……。