「なにか、飲みますか?」

土砂降りの雨の中に、和音くんの声が静かに響く。

どこを見るとはなしに見ていた私は、ゆっくりと和音くんを捉える。彼の綺麗な顔が、心配そうに少しだけ眉が潜められていた。

……心配。

そう、心配、してくれている。

と、いうことは。

彼は私の置かれている状況を、理解してしまったということ……かしら。

……ああ、何をしているんだろう。

本当に何をしているんだろう。


ぼんやりしていた思考が、やっと動き始める。

「ああ、いえ、今はいいわ。ありがとう」

そう言って、視線を彷徨わせた。

どうしよう。

心配かけてごめんなさいと、謝るべきなの?

ていうか、本当に何をしているの、私。

年下の……しかも中学生に、色恋沙汰で心配をかけて。しかも助けてもらって。

大人失格。

ホント、駄目大人。

馬鹿、私の馬鹿。

あああ……胃が、きゅっと縮まる思いだ。