雨宿りのために入ったのは、たった今勇人さんが結婚式を挙げていた教会の裏手にある扉。

式を挙げる礼拝堂は二階にあって、一階はロビーや控え室、結納などに使われる個室がある。

その入口は、先程新郎たちが下りてきた表側から建物をぐるりと回った裏側にあって。そこから、入ってきたのだけれど……。


雨が降る前に勇人さんや親族の方々は披露宴会場へと移動したのだろう。

先程まで結婚式があったという余韻は、一階には感じられなかった。

同じように雨から逃げてきた人たちが、こじんまりとしたロビーの中にちらほらと見受けられる。

ざわざわする声は、それ以上に大きい唸るような豪雨の音に紛れ込んで、明かりがついているはずの館内は、灰色に染まる外の景色のように暗く霞んで見えた。

先程まで真っ白になるくらい強い日差しの中にいたせいなのか。

壁にかけられた絵も、花瓶に飾られている豪華な花も、激しく雨打つ外の景色を眺めながら談笑する人々も。

なにもかもが、ぼんやりと霞んで見える。