「いいものを見つけたわね」

そう声をかけると、一瞬だけ和音くんの視線はこちらへ向いたけれど、頷いた後はすぐにCDに向いてしまった。

いつも冷静で大人びている和音くんの目が、宝物を発見したときの少年のように輝いている。

……いえ、彼の年齢から言えば、間違いなく『少年』なのだけれども。

和音くんは年よりもずっと落ち着いて見えるから。

こんな子どもみたいな顔もするんだと、少し意外だった。


意気揚々とレジへ向かった和音くんを微笑ましく見送り、ふむ、と考える。

和音くんはギトリスのような音を目指しているのかしら。

でも、彼の繊細な音だと、もっと華やかな方がいいような……ギトリスとはイメージが少し違う気がするけれど……。


それからはジェラートを片手に、街中をゆっくりと歩いた。

目指すべき青い尖塔と鐘のある教会へ近づくごとに、落ち着いたはずの心臓がまた大きく鳴り出す。