でもここは、前向きに。

よくよく思い返してみれば、私も初めて電車に乗ったのは高校生になってからだった。何もおかしいことはない。

彼らに社会見学をしてもらうのだということにして、さっそくホームへ向かったのだけれど。

あまり人混みに揉まれ慣れていない彼らは、あっという間に人波に攫われていく。

小さな花音ちゃんなんかは、拓斗くんを巻き添えにしてどんどん、どんどん押し流されていく。

いつもはしっかりした印象の和音くんですら、戸惑いを隠しきれていない顔だ。


……そんな彼らを見ていると、ふと、思い出す。初めて電車に乗ったときのことを。


私が初めて電車に乗ったときは、勇人さんと一緒で。

電車が初めてという私に驚きはしたものの、彼は優しい笑顔で手を繋いで引っ張っていってくれたっけ。

ほんの少し不安になっていた私には、見上げる勇人さんの優しい横顔がとても頼もしかった。

そんな思い出がツキリ、と小さな痛みを伴いながら蘇る。