「……そんな勇気、ないわよ」

自嘲気味な笑みを浮かべながら自分の思考をばっさりと切り捨てて、携帯を持った手をベッドの上に投げ出した。

そうして目を閉じて、意識を閉ざそうとしても。

メールの内容は思考の中に滑り込んでくる。


勇人さんの結婚式。

サンタマリア教会で。

来月。

……来月。


──もう、明後日。


明後日には、私が憧れたゴシック様式の教会で。

彼はしあわせな人になる。



私は。

私は……。


ぎゅっと、携帯を握り締める。

自分ですら形に出来ない想いが、ぐるぐると胸の中で渦を巻いて絡まっていく。


──もう、寝よう……。