みんなで演奏をすることを想像したら、自然と笑顔になった。

そんな私を、アキちゃんは猫目を丸くして眺めている。

「へえ……あんたがそこまで言うなんて、よっぽど気に入ったんだ。プロ以外で褒めるのなんて、唐沢先輩くらいだったのに」

ぐっ、と。

その名前が出た途端に、息が詰まった。

その反応に気づいたのか、アキちゃんからは呆れたような溜息が聞こえてきた。

「……そっちか」

「……ま、まあね」

「このおバカ」

「ううっ……」

「終わったことでいつまでもウジウジしない! もうあれは別の女のものなんだから!」

「や、やめて、傷口を抉るような台詞は……」

「こんくらいで悄気てんじゃないわよ! 前向け、前! グルコンの後はソロコンサートがあるんでしょうに! その橘兄弟にもちゃんと教えたいんだったら、まずは自分がしゃきっとしろ!」

くわっ、と目を見開いて怒鳴るアキちゃんに、まさにおっしゃる通りです、と小さく縮こまった。

そんな私を見て、アキちゃんは苛々した顔で扉横に立てかけていたチェロケースを持ってきた。