そう、祈りを込めて和音くんを見つめると、彼は反抗の意思を長い睫を伏せることで打ち消し、頷いた。

「……はい」

声には少し不満の色が混じっている。

それでも頷いてくれたことにほっとした。

自分の意志を曲げてまで頷いてくれた彼のために、本選までには必ず。

必ず、結果を出せるようにしてあげたい。



その後、コンクールには不参加だったはずの花音ちゃんも予選に出たいと言い出したので、私も一緒に予選会場へ行くことになった。


ホールで聴いた3人の演奏は、まだ完成には遠いけれど、それでも安定感は抜群だった。

さすが、コンサートホールでの演奏に慣れている。


まあ……3人とも自分では満足な演奏ではなかったみたいだけれど。

鐘の音がまったく聞こえないという和音くん。

まだまだ弾きこみが足りない拓斗くん。

そして花音ちゃんは、お友達と揉めたのが原因か、少し萎縮した演奏になってしまっていた。