……ああ、やっぱり駄目。

音が硬い。

無機質な、感情のない人形が弾いているみたい。

最初に聴かせて貰ったときにはこんなに機械的じゃなかった。どうしてこんな弾き方になってしまったのだろう。

……私の教え方が駄目だから?

きちんと教えられていないから──。


申し訳なくなって顔を上げて、ヴァイオリンを弾く和音くんの顔を見て。

はっ、と息を呑んだ。

どうして──。

どうしてそんなに、苦しそうなの。


「はい、そこまで」

思わず手を叩いて演奏を止めてしまった。これ以上演奏させてはいけないと思った。

そうしてピアノの前から和音くんの目の前まで移動する。

「和音くん、昨日はどのくらい練習したの?」

「昨日……は、8時間ほど」

「その前は?」

「その前も、同じくらいかと」

「そう……」

8時間。

普通といえば普通。妥当と言えば妥当。

彼は予選なんて眼中にない。本選の、一番高いところを目指しているはずだから。

だけど……。