大学のレポートは残念ながら、いくつか舞い戻ってきてしまった。

仕方ない。2日徹夜したくらいで書ける量ではなかったのだから。

どうにかして夏休みは確保しなければと、大学の図書室で唸りながらシャープペンを走らせる。

「だから早くやりなって言ったのにー」

目の前の席に座るアキちゃんは、いい気味、とでも言いたげに歯を見せて笑っている。

「う、うう、手伝って、アキちゃん……」

「そのくらい自分でやりなさいよ」

「学食のスペシャルランチ奢るからっ」

「あーら残念。今日はユズのお弁当なのー」

ふふん、と鼻で笑うアキちゃん。

ユズというのは、アキちゃんの彼氏の柚貴くんのこと。

「ええっ、羨ましい! 私も一緒に食べる!」

「アンタ図々しいわよ」

「だって柚貴くんの出し捲き卵、天下一品だものっ!」

ぐっと拳を握って力説すると、アキちゃんは呆れたように溜息をついた。

「……時々アンタがお嬢様だってこと、忘れるわ」