ちゃんとした指導が出来ていたのか、そうでないのか分からないまま後片付けをしていると。

「水琴さん、お忙しくはないんですか? 学業もそうですけれど、コンサートなんかもあるんじゃないですか」

そう、言われた。

二日徹夜でレポート提出してきたばかりで、まだ夏休みが来るかも分からない私は、どきーん、と心臓を鳴らす。

もしかして疲れが顔に出ている?

クマがあるとか?

と、目の下に手をやり、ドキドキしながら微笑んでみせた。

「私なんてまだまだ駆け出しだもの。それに、前期試験のレポートはもう提出してしまったし。好きな作曲家についてに書け、だったの。楽しかったわ」

泣いて叫びたいくらいに大変だったというのに、余裕たっぷりに見えるように微笑む私は、女優になれるんじゃないかと思った。

でも。

「それは興味深い課題ですね。確かに、楽しそうです」

綺麗な微笑を浮かべる和音くんは、更に優雅だ。


……ま、負けた。

本物は、やっぱり違う。