力が抜けて、ばさりとトートバッグが足元に落ちた。

その音に私たちの唇は引き離される。

至近距離にある和音くんの瞳は、変わらず真っ直ぐに私を見つめていた。

「……好きです」

もう一度想いを告げられ、再び触れ合う唇はとてもあたたかくて。

離れていくのが寂しいと……離したくないと、そのぬくもりにしがみつきたくて仕方なかった。

「……抵抗、しないんですか」

切なげなその声に、だって、と心の中で反抗する。

抵抗したくても、出来ないのだもの。

だって。

私は、貴方が。



コンコン、と再びノックされた。花音ちゃんがお菓子を持ってきてくれたのだ。

和音くんも二度は無視出来なかったようで、私を解放し、力の抜けてしまった私の手を引いてソファに座らせてくれた。

するりと離れていく手を、思わず追いそうになって。

ふと、一条隆明の言葉が頭を過ぎった。


『自由にしてくれて構わないよ』