「特に問題はありませんよ」

「本当?」

「ええ、ご心配ありがとうございます」

ヴァイオリンや弓を片付けながらそう言う和音くんにほっとする。

「それなら良かったけれど……。ごめんなさいね。私、相当浮かれていたみたいで」

手にした楽譜をトートバッグにしまい、思わず本音がポロリ。

「……水琴さんがですか?」

「ええ。楽しい時間を過ごせたものだから……つい、ビンのラベルを見逃してしまって。……反省してます」

あまりにも浮かれすぎて未成年に飲酒をさせるだなんて……本当に駄目大人だ。

良く見れば、ちゃんと『お酒』って注意書きがあったのに。

……和音くんも呆れているわよね、きっと。

怒ったり、していないかしら……。


心配になってチラリと顔を上げると、一瞬だけ目を合わせた後、和音くんはすぐに持っている弓をクロスで拭き始めた。

「楽しく過ごせたのなら何よりでした。僕の方こそ随分と浮かれていたようです。おかげでご迷惑をおかけしてしまいました」