そして、最後に和音くん。

花音ちゃんも拓斗くんもストラディバリウスを持っているけれど、和音くんのあれは……もしかして『レディ・ブラント』ではないかしら。

数十億はくだらない、ストラディバリの傑作。

中学生がストラディバリウスなんて。

なんて羨ましいっ……!


そんな羨望の眼差しを向けながら聴いた和音くんの演奏は。

……素晴らしかった。

拓斗くんもずば抜けていると思ったけれど、和音くんはその更に上だ。

深い音色、綺麗な指の運び、完璧なまでの曲の組み立て方。

これが中学生の演奏なの、と、思わず手に握りこぶしを作った。

辛口なことを言えば、本当に、重箱の隅をつつくくらいに細かいことを言えば、神がかった技巧に表現力が追いついていない、ということくらい。

でも表現力は人生経験に比例する。

中学生がこれだけ弾ければ文句はない。むしろ、そのへんで大威張りしている勘違いした大人なんか押しのけて、プロとしてステージに立って欲しいくらいだった。


……こんな天才少年に教えるの?

私が?