「おいしい」

ごくん、とケーキを飲み込んで、またケーキにフォークを刺す。

ぽろり、と涙が零れた。

それを拭うことなくケーキを口へと運び、甘さを噛み締めながら喉の奥に飲み込んでいく。


笑顔に溢れていたクリスマス。

いつも楽しいヴァイオリンレッスンに料理教室。

そこにある静かだけれど優しい人の顔。

ケーキを口にするごとにそれが浮かんできて、次々に涙が零れてきた。


どうしてだろう。

私の選んだ道が正しかったと思おうとすればするほど、ケーキの優しい甘さが恋しい。


なんだか今、凄く。

和音くんに会いたい……。