世界の大企業、一条グループの50周年記念パーティだ。きっとマスコミも山のように来るのだろう。

これはそのための対策で、メディアにきっちり対応することも私の仕事になる。

……仕事。

そう、仕事だ。

そう思えば行き場のない怒りも少しは和らぐ。感情を押し殺す自分のことも認められる。

そもそもこれは『政略結婚』。

そこには甘い夢など存在しない。

初めから分かっていたことだ。

「自由をくれるというなら、それでいいわよ。ヴァイオリンは続けさせてくれるし、ハウスキーパーだって雇ってくれるって言うし、きっと贅沢させてくれるし、それで会社も立て直してくれるって言うんだから、これ以上条件のいい男性なんていないわ」

父の選んだ人は正しかった。

私の選んだ道も正しかった。

そう思って過ごしていればいいんだ。