和音くんの専属執事である西坂さんに迎えに来てもらい、大事なお坊ちゃまに飲酒をさせてしまったことを深々と頭を下げて侘び、そうして律花さんにも電話で詫び──彼女は豪快に笑って許してくれたけれど──心臓が落ち着かないままに迎えた次の日。

また違う意味で落ち着かない心臓を押さえながら、私は高級ホテルの最上階にあるスイートルームのリビングにいた。

座り心地の良いソファに座り、正面に立っているグレーのスーツ姿の背の高い男性を眺める。

「ああ、だからその件については戻ったときに。いいかい? ああ、よろしく頼むよ」

この部屋に着いてすぐにかかってきた電話に対応しながら、私に片手を挙げて謝罪する一条隆明は、先程から引っ切り無しにかかってくる電話の対応に追われていた。

ニューヨークにある一条の関連会社で働いていると聞いていたけれど、どうやらそれとは別に、大学在学中から自身で立ち上げた会社で色々とやっているらしい。

……忙しいわけだ。

私との顔合わせが婚約発表間際になったことも、パソコンの前を行ったりきたりしながら電話をしている姿を見れば頷ける。