空が泣いている。

ぽつぽつと落ちてくる涙が、私の髪を濡らす。


「……行かないで」

去っていく背中を見つめながら、呟く。

「行かないで」

震える声はもう、あの人には届かない。

次第に激しくなっていく空の涙は、更に私の髪を、肩を、頬を、目を、濡らす。


──違う。


冷たく雨に濡れた頬を流れていく、このあたたかなものは。


私の、涙だ。