「橘和音はよくこれに付き合えるわね。なんて気の長い子なんだ……スゲーわ」

ぐったりした様子のアキちゃんに、私は申し訳ないと思いつつも雑誌を差し出した。

「アキちゃん、次はローストビーフを作りたいんだけど……」

「もう一人でやれやあああああっ!」


凄く凄く怒られたけど、アキちゃんは最後まで付き合ってくれた。

「優しいよね、アキちゃん」

「フフフ、アンタと付き合うようになってから我慢強く成長したのよ、あたしは……」

アキちゃんはフラフラとリビングのソファに座り込んだ。

「ありがとう。あとはクリスマスまでに更に特訓を重ねるわ」

料理完成の希望が見えてきた私は、笑顔で彼女の肩を揉み解す。

そんな私をアキちゃんは肩越しに振り。

「なんだか一生懸命だね」

と、軽く微笑みながら言った。

「ええ、そりゃあもう。和音くんに喜んでもらいたいもの」

「喜んでもらいたい、ねぇ」

「……なによ?」

「いや。橘和音といるのは楽しいかい?」