ブスブスと黒い煙を上げる平らなスポンジを見下ろし、怯みそうになったけれども。

「でもいつも最初はこんな感じよ。ここから成長すればいいの。やれば出来るのよっ」

諦めなければちゃんと出来上がるのだと、黒いスポンジを使ってデコレーションの練習。

……まあ、それも、ただの黒い山と成り果てたのだけれど。

諦めずにケーキを最後まで完成させてから、二度目のスポンジ作りに挑戦する。

「スポンジだけでも市販のロールケーキ使えば? お坊ちゃんがお腹でも壊したら困るじゃない」

「ううん、ちゃんとやるわ。和音くんを驚かせるんだから」

「……やる気だけは認めるけどねぇ」


それから何度も何度も失敗して、その度にアキちゃんに怒鳴られて、私の体力も限界、アキちゃんの声もガラガラになりはじめた頃、ようやく味だけはまともなブッシュ・ド・ノエルが完成した。

「やった……!」

感動してアキちゃんに抱きつく私。

「やった……」

疲労感たっぷりに溜息を零すアキちゃん。