「私、全然お料理出来ないんだけど、教えてくれないかしら……」

ちょっとした思い付きで出た言葉。

それに和音くんは意外そうな顔をした。

「全然出来ないんですか?」

「そ、そうなの。実を言うと、実家では家政婦さんや母がやってくれていたから、やったことがなくて……ここに引っ越してからも、料理しなくてもなんとかなっていたから……」

「ああ……」

と、和音くんは私の向こう側をチラリと見た。

彼の視線の先にあるのは、リビングのテーブルの下で山になっているコンビニの袋だ。

「そうなんですね」

納得したように言う和音くんに、私は小さくなりながら頷いた。

すると彼はほんの少しだけ考えてから、にっこり微笑んだ。

「いいですよ」

「え……いいの?」

「僕に出来ることだったらなんでもします、と言いましたからね」

「……ありがとう」

「どういたしまして」



──こうして。

美少年の料理教室が開かれることになった……。