途切れた意識の向こうで……雨が降っていたような気がする。
あの冷たい雨が。
勇人さんが私に背を向けて去っていく。
何度も再生された古びたフィルムのように、「行かないで」と、必死になって追いかける。
父や母も雨の中、私に背を向けていた。
「行かないで、おとうさん」
小さい頃の自分が、一生懸命両親に向かって走っていた。
足元でパシャパシャと跳ねる水滴がやけに冷たい。その冷たさに足を絡めとられて、転んで、前に進めなくなった。
嫌だ、嫌だ。
ちゃんとするから。
だから、置いていかないで。
あなたたちの想いにちゃんと向き合うから──置いていかないで。
冷たい雨の中、声にならない声を上げていると。
ふっ、と。
肩を濡らす雨が、あたたかくなった気がした。
それに気づいて、振り返る。
灰の空が、蒼になっていた。
降り注ぐ太陽の光で、天から落ちてくる雨粒が宝石みたいにキラキラと輝いている。