今日はどのようなご用向きで、と質問された私は、咄嗟に「近くまで来たものですから、ご挨拶をと思いまして……」と嘘をついた。

すると西坂さんは強面の顔を不気味に歪めながら──恐らく微笑んでくれたのだろう──私を門の中へと案内してくれた。

「徒歩でいらっしゃるときには、正門からよりも東門からの方が近いので、今度来られるときはそちらをご利用くださいませ」

「そうなんですか、分かりました……」

「それから、あまりお一人では歩き回られませんように。このように庭は広大ですので、迷子になられる方も多数おりまして。必ず私どもにお声かけください」

「はい」

「それに、不法に屋敷に入ろうとする愚か者対策のために、色んな罠が仕掛けてありますゆえ、危険です。昨年も行方不明者捜索のためにかなりの人を使いましてな」

「……そうなんですか」


……ここは樹海かしら。

道を逸れたら命に関わる。

そんな危機感を覚えながら西坂さんについて歩いていくと。

お城が見えてきた。