「……結局、お父さんもお母さんもアンタが大事なのよ」

次の日。

賑やかな居酒屋の片隅で、私はアキちゃんと向かい合って飲んでいた。

明日はバイトが休みらしく、両親とのやり取りを聞いた彼女は、今日はとことん付き合ってくれると約束してくれた。


串焼きを頬張り、ぐいっとビールジョッキを傾けたアキちゃんは、串の先を私へ向けた。

「アンタもね。結局、親が大事なんだよね」

「……そうね。自分でも知らなかったわ」

「土壇場で親を捨てられない。……そういう家で育ったんだよ、アンタは。幸せなことじゃないの」

「うん」

ニシシ、と笑ったアキちゃんだけれど、串を皿の上に乗せると、ふっと哀れむような目に変わった。

「そのせいで辛い思いをすることにもなるけどね」

それに私は苦笑を返す。


辛い思い。

そうなのかもしれない。

でも……私の気持ちひとつで、悪いことも良いことに変わるかもしれない。……そう思いたいと、ビールジョッキを持ち上げる。