「ちゃんと言ってくれたら、私だって……!」

同じことをしていた私に、父を責める権利があるだろうか。それでも言わずにはいられなかった。

ちゃんと言ってくれたら、もっと話し合って。

この家を出て行くこともなくて。

まだ貴方の傍にいたかもしれないのに。

「……言えるものか」

父は目を伏せた。

私と目を合わせているのが辛そうだった。

「家族も満足に護れない、情けない父親が。娘に望まぬ結婚を押し付けて、『これが最良だ』と……そんな、ことが」

ずっと私に背を向けていたのは、情けない自分を恥じて?

私に対する罪悪感から?



ああ、本当だ。

向き合わなければ……大事なことに、気づけない。



「お父さん」

下を向いてしまった父に、私は決意した。

「私、ちゃんと結婚しますから。……安心して。何も、気に病まないで」

父は更に俯いてしまった。

「……すまない」

ただ一言、そう呟いた。