感じる違和感。

気づけなかった想い。

「まさか……この縁談は……私の、ため?」

震える声で訊ねると、ややあって返事があった。

「すべてを見通し、最良の選択をしたまでだ」

なんの感情もない──いえ、感情を押し殺したかのような、静かな声だった。

「お父さん」

私は呼びかける。

「お父さん!」

強い憤りを感じながら、執務机を回り込んで背を向ける父の前へ。

「こっち見て話してよ!」

革張りの椅子に座った父は、ゆっくりと私を見上げる。

その瞳に昔のような覇気はなかった。

皺が増えた。

白髪が増えた。

知らない間に歳を重ねたのだと……苦労を重ねたのだと、今更ながらに知った。

「私のことをちゃんと考えたんだって、言ってよ! 言ってくれなきゃ分からないじゃない!」

言いながら、既視感に襲われた。

言わないと分からない。

伝えないと駄目だ。

……勇人さんと交わした会話だ。