ひいいいぃいぃいぃいい!


声にならない叫び声を上げ、後退る。

何故こんなところに怪物が!

逃げよう。

逃げなくちゃ。


……と、アキちゃんを振り返ったら、彼女はすでに数百メートルも離れたところを爆走していた。


あ、アキちゃ──ん!


思わぬ親友の裏切りに涙目になっていると、フランケンシュタイン似の大男が恭しく頭を下げた。

「もしや、斎賀水琴様でいらっしゃいますか」

「はっ? えっ? は、はい、そう、です、が……」

「ああ、やはりそうでしたか。今度我が主人の先生になられる方だと奥様にお聞きしております」

「あ、え、そう、ですか……。あの、貴方は……?」

「橘家ご長男、和音様の専属執事、西坂でございます。以後お見知りおきを」

このフランケンシュタイン似の強面の大男が橘家の執事だということにも驚いたけれど。

ご長男専属執事。

……やっぱり橘家は次元が違う。