「そう……お別れを、言いに行ったの」

バクバクと鳴り響く心臓。

「私は……私は今でも貴方が好きで」

どこまで話して、大丈夫なんだろう。

そんな疑問を頭の中にチラつかせながらも、言葉が溢れてくる。

「別れようって言った後も、結局はずるずる会ってたし、だから貴方が他の女と『子どもが出来た』なんて言ったときは信じられなかったし、でも、それでも好きでどうしようもなくて……本当は貴方もそうなんだと、ずっと思ってしまって」

『……否定は、しない』

勇人さんは言った。

『君が一条グループの御曹司と婚約したって聞いたときは、俺には何も出来ないだろうと思った。だけど……君に別れを切り出された後もずっと待っていたんだ。君が、俺に助けを求めてくれないかと』

その言葉に、心臓がひやりとした。

『未練がましいかもしれない。でも、それをずっと期待していた。心のどこかで絶対に無理だと思ってはいてもね』

言葉が出なかった。

『君のことが、好きだった。……今もね』

代わりに涙が溢れて、頬を伝っていった。