「ええ……」

心臓ばかりが煩く鳴り響いて、肝心の口は無言になる。

『葉書……届いたのかな』

何も語らない私の代わりに、勇人さんから話を振られた。

「ええ」

『そう。それで……水琴は今、忙しいのかな? もうすぐコンサートがあるって聞いたけど。もし時間が空いているなら、遊びに来て欲しいと思ってるんだけど』

バタン、と扉を閉めるような音が聞こえてきたから、多分、車に乗り込んだところなのだろう。

彼は今、音楽教室でヴァイオリンを教えている。

きっとそれが終わって、これから奥さんのところに帰るんだ。


ぎゅっと、携帯を握り締める。

「……あの、違うの」

何が違うのか。

脈絡がないと思いつつも、余裕のない私はそのまま話を続ける。

「そういう話じゃなくて。……あの」

深く息を吸い込んで、吐き出す。

「……もう、貴方に会うのは、無理、よ」