「……うん」

私は頷いた。

泣きながら、頷いた。


今度こそ決着をつけよう。

きちんと終わらせよう。



その日の夜、心が変わらないうちにと、少しだけ破けたポストカードを片手に携帯を開く。

アドレスの中にある、未だ消せない『勇人さん』の文字に、心臓が苦しいくらいに鳴る。

「……大丈夫」

ベッドの上に座り込み、何度か深呼吸して、冷たくなって震える手で通話ボタンを押した。


1回、2回、3回。

そこでコール音が途切れた。

『はい』

携帯越しに聞こえてきた低い声に、ビクリと肩が震えた。

「……あ」

緊張しすぎて声が出ない。

ごくりと唾を飲み込んで、携帯を強く握り締めた。

大丈夫、大丈夫。あの蒼い空に鳴り響く鐘を思い出して──。

「勇人さん。私……水琴、だけど」

『うん』

名乗ったら、ふっと柔らかい笑い声が聞こえてきた。

『久しぶりだね』