「てか、屋根が見えないんですけど?」

高い門扉の向こう側を背伸びしてみるアキちゃん。

確かに、見えるのは森のような風景ばかり。

「門からお屋敷までは結構距離があるみたいよ。大抵は車で玄関まで乗り付けるって、律花さんは言っていたけれど……」

「はぁ~。次元が違うわ」

感心したような、呆れたような、そんな声でアキちゃんは言った。


アキちゃんも私も、それなりの良家に生まれているけれど。

彼女の言う通り、橘家は次元が違う。

「こっちから入れるのかしら」

アキちゃんは物珍しげに門の周りをウロウロしている。

「アキちゃん、そんなにジロジロ見てたら不審者にされちゃう……」

と、止めようとして。

「当家に何か御用でございますか」

後ろから野太い声で声をかけられた。

はっとして振り返ると、そこには。

フランケンシュタイン似の大男が、いた。