そんな私に、アキちゃんはひとつ息を吐いてから、言う。

「無理やり笑顔で別れたってしこりが残るだけだよ。今のアンタはそうだし、多分先輩もそうだよ。ったく、どっちも融通の利かない真面目人間なんだから……もっと割り切れば楽になんのに」

「……うん」

「そういうヤツはさ、自分に嘘ついて笑ったって駄目なんだって。白黒決着がつくまで言いたい事吐き出してきちゃいなよ。ずるずる行くのは嫌でしょ?」

「うん」

アキちゃんの言う通り。

私はあの教会で。

笑って「おめでとう」だなんて、格好つけないで。

人目もはばからず泣いて叫ぶべきだったんだ。そうしなきゃいつまでもメソメソしたままで、そんな自分を嫌いになるばかりだ。


でも……。

私に、出来るんだろうか。

ずっと心の拠り所にしていた温かい笑顔を、断ち切るなんて。


ギュッと拳を握り締めたとき、ステージ上に和音くんが現れた。

ホール内が一瞬だけざわめく。

天才少年『橘和音』の登場に。