彼と出会ったのは、両親との間に不協和音が鳴り出した頃。

家にいたくなくて、学校でヴァイオリンばかり弾いていた私を、ずっと支えてくれたのは勇人さんだった。

家にいれば父と喧嘩した。母はそんな私たちを黙って見ているだけだった。

殺伐とした家の中には、誰も味方はいないと思っても。

勇人さんだけはいつでも優しい笑顔で隣にいてくれた。

夜遅い時間に呼び出しても嫌な顔ひとつせずに話を聞いてくれて、「大丈夫だ」って言って、安心する笑顔を見せてくれる。

いつも、いつもそうだったから。

その安らぎの場所をばっさりと切り捨ててしまうのは──自分の心の拠り所を失くすのと同じなんだ。

どんな形でもいいから繋がっていたいと思うのは、恋愛感情からなのか、そうでないのか。

ただ、依存しているだけなのか。

確かなのは、破れないポストカードは、未だ彼に依存している証だということ……。


次の子の演奏が終わり、盛大な拍手が鳴る。

私も力なく拍手を送る。その横で。

「……繋がりが切れるのは嫌、か。もしかしたら、先輩もそうなのかもね」

ぽつりと、アキちゃんが呟いた。