「うん、返事こないからそうだと思って、ひとりで聴くつもりで来たんだけど……ちょうど良かったわ、アンタに会えて。橘夫妻に握手までしてもらったし!」

音楽家の憧れである橘夫妻との遭遇は、アキちゃんでも嬉しいみたい。

「サインも貰っておけば良かった!」

と、少し残念そう。

そんな彼女を見て笑いながら……なんだか泣きそうになってきた。

彼女は私が甘えられる、唯一の相手だ。

「アキちゃん……あとで、話、聞いてくれる?」

「いいけど、何?」

「……なんかもう、一杯一杯で」

「なによ。……先輩とはもうケリつけたんでしょ?」

「その、つもりだったんだけど……」

自分の駄目ぶりを人に曝け出すのって辛い。

でも吐き出さないとどんどん駄目になりそうで。

あとで、と言っておきながら、薄暗いホールの閉塞感のせいなのか、ポストカードのことや、自分がまだ吹っ切れないことも、するすると話してしまった。

「……は?」

ポストカードの内容を聞いたアキちゃんの反応には、怒気が含まれていた。