言うとイノリはじっとあたしを見上げてきた。


「ともだち……。それって、女の子?」

「勿論。女の子だよ」


頷くと、急に成長しやがったらしい男の子は考えるようにこぶしを顎にあて。
仕方ない、というようにため息を一つついてみせた。


「じゃあ、女の子ならよしにしてあげる。でも、男の子は絶対にだめ。いい?」

「あ、ハイ」


こくんと素直に頷いた。
つーか、これってあれだろ? あれだよな。
独占欲的な、そんな感じだよな。うん、間違いねえ。
となれば、だ。

……こんな小さなかわいい男の子に独占欲見せられて、

萌 え な い わ け が な い。


なになに、そんなにあたしに懐いてくれたわけ?

やーだー、もうかーわーいーいー!!!

力任せに抱きしめて、柔らかい髪の毛モッフモッフしてぐりぐりしてぇ!

小さいけどれっきとしたした男の心に傷をつけそうで、できないけど。
ああ、もどかしい。

あまりにキュンキュンしすぎて潤んだ瞳で前を見れば、柚葉さんがこぶしをひたすら膝に打ち込んでいるところだった。
多分、あたしと同じ理由で衝動を抑えられないのだろう。
気持ち、充分わかります。


「な、なに? とりあえずオレは呼んだらだめってこと?」


状況を把握していない三津が訊くので頷いた。


「だめですね。みーちゃん呼びは許可しますんで、そっちでお願いします」

「そうね、ヒジリはだめ。ううん、アタシもみーちゃんにするわ」

「あ、お願いします。
イノリ、これからは『ミャオ』呼びしていいのは、イノリと前からの友達だけにするね」

「ホント!? うんっ!」


ぱあ、と顔を輝かせたイノリ。
もうたまらずにぎゅうう、と抱きしめた。

かわいすぎるー。
胸がキュンキュンしすぎて破裂するー。


「苦しいよー、ミャオ」

「もー少しだけー」


ばたばたと暴れる小さな体を抱きしめる。


「離してよー」

「ふふー、暴れても無駄さー。……ん?」


ふと思い出した。
さっきのデジャヴ。あれ、昨日の話じゃん。
穂積との会話がまざまざと甦る。

そうだ、穂積があたしのことをミャオ呼びしたことに対して、大澤が怒ったんだ。
『オマエは呼ぶな』なんつってて、あの時は意味分かんね、とか思ったんだけど。

あいつ、あたしが今のこの約束を破った、って怒ったのか。