6歳児って結構重たいなー。
うんしょ、とイノリを抱えて、隣室に敷かれた布団に寝かせた。
すっかり熟睡しているらしく、起きる気配がないことにくすりと笑った。

朝から、ええとかれこれ何時間だっけ。
日差しもきつかったのに、頑張ったもんね。
ここに父ちゃんはいなかったけど、足取りがわかるといいね。
あたし、最後まで付き合うからもう少し頑張ろうね。


「美弥緒ちゃん、コーヒーでもいれるから、こっちにおいで」

「あ、はい」


柚葉さんに呼ばれて、そっと部屋を出た。音をたてないように襖を閉める。


「あと1・2時間もしたら劇団の連中が来るからさ、待ってたらいいよ」

「すみません。あ、手伝います」


キッチンでお湯を沸かしながら、片付けを始めた柚葉さんの元に行った。
缶の中身を洗い、見つけた大きなビニール袋に放っていく。
てきぱきと食器を洗っていく柚葉さんに、ありがとね、と言われて、いえいえと首を振った。


「すんませんねー。ごくろーさまでーす」


窓際でぼんやりタバコを吸っていた三津が、心にもないお礼を口にする。
こいつのコーヒーは超薄くいれてやる。

片付けをざっと終えて、お盆にコーヒーを3人分のせてテーブルに戻った。
もちろん一番薄い、色がかろうじてついているだけのコーヒーを三津の前に置く(不味いだなんだと騒いでいたが、柚葉さん共々聞こえないフリをしてやった)。

ふう、と一息ついたところで、三津があたしの顔を覗きこんだ。


「ねえ、みーちゃん」

「美弥緒です。なんでしょうか?」

「あ、冷たい言い方すんなよー。みーちゃんはさ、祈の何なの?」

「……え?」

「だからー。あんな子どもをわざわざ連れてくるって、面倒じゃん? どんな関係なのさ」


やっぱそこ突いちゃいますか。
だよねー。
さて、何というべきだろうか。
暇な女子高生でーす、が無難だろうか。いや無難なのか?


「別にいいじゃん、聞かなくっても。この子は善意で祈くんを連れてきた、それで充分じゃん。悪意があるわけじゃないんだし」

「ええー。気になるもん、オレ」


柚葉さん、本当に好きな性格だなあ。
さっぱりした気風のよさ、すごくいいです。


「悪意のあるなしも大事だろーけどさあ。
みーちゃんのしてることって、下手したら誘拐扱いなんだぜ?
年端もいかない子を連れまわしてるんだぞ。
実の親だって、捜してるだろうしさー」

「まあ、それは確かに、ねー。あ、思い出した」


マグカップに口をつけていた柚葉さんが、おもむろに立ち上がった。
玄関まで行って、小さな紙切れを持って戻ってくる。


「そういえば、昼頃に男の人が一人来たんだった」

「え、オレ知らないけど」

「アンタはいびきかいて寝てたじゃん。
アタシはドア叩く音で起きたんだけどね。
で、男の子がここに来るかもしれないから、その時は連絡くれって言って、コレ置いてったんだー。きっと祈くんのことだよね」