「ええええええええええええっ!?」


教室を揺るがすほどの、女子の悲鳴が巻き起こった。


「ええええっ!? 大澤くんって化け猫が好きなわけ?」

「そんなそぶりなかったし! 嘘! 信じらんない」



うわあうわあと叫ぶ彼女たちの乱れた様子に唖然としていると、悠美があたしの肩をがっしと掴んだ。


「猫娘! そうなの? そうなの? そんな関係なの?」


ちょ。目つきがいつもと違いますけど。
怖い、怖いよ。
肩痛いよ。
爪くいこんでるんだよう。


「い、いやいや、何の関係もないって!」


ぶんぶんと首を振って、否定。
変な誤解を早く解かないと、あたしの身が危うい。


「大澤の勘違い。あたしを誰かと勘違いしてるみたい」

「大澤くん! どうなの!?」


女子の大半の視線が大澤に向けられる。
その異常なまでの熱気に気圧されたのか、大澤が少し怯えたような表情を浮かべた。

女子、怖いよな、大澤。
怖いうえ、痛いんだぜ。
爪、ぎちぎち刺さってるんだぜ、今もな。


「嫉妬、独占欲なんだよね、さっきの大澤の言葉は」


おい、穂積。
火にガソリン撒いてんじゃねえぞ。
この勢いだと、森一つくらい、軽く全焼すんぞ。


「どういうこと!? やっぱり化け猫が好きなわけ?」

「化け猫と仲良かったっけ? 話してるとこ、見たことないんだけど!」

「ええー! 化け猫はノーチェックだったのに、あたし!」

「猫娘! 答えな?」


ごつかったりいかつかったりする男は結構平気なあたしだが、殺気だった女子さまは、すんげえ怖い。
さっきの大澤の顔より、確実に今の悠美たちの顔のほうが恐ろしいです。
助けて、ママー。


「よ、よくわからんが、おまえら落ち着け。仮にも授業中だぞ!!」


おお、森じい! 天の助け!
野太い声を荒げた森じいを、思わず拝む。
ああ、ありがたや。


「だってえ、今確認しとかないとー」

「重要な話なんですぅ」

「確認なんていらんだろう。大澤が茅ヶ崎を好き。結構じゃないか、なあ、茅ヶ崎!」


おい。同意求めんな、じじい。