「ミャオ! だいじょうぶ!?」

「あ、イノリ。へーきへーき。これくらい余裕っしょ」


心配そうに体をこちらに向けるイノリに笑ってみせる。


「よいしょ、と。イノリ、足見せてみな」


ぺたんと座り込んだイノリの傍に行き、足を確認する。
左足首が熱をもって腫れていた。
出血している箇所は……なし、と。


「ちょっと触るね……、うん、捻挫みたいだね」


よかった。でも、早く冷やしたほうがいい。
イノリに背中を向けて、屈んだ。


「あとは、どっか痛いとこはない?」

「ない。ない、よ」


間近で顔を見ると、泣きはらしたように瞼が腫れていた。
体はひくひくと震えている。


「よかった。心配したんだぞ、もう」


にこりと笑って言うと、それが我慢の糸を切ってしまったらしい。
くしゃりと顔を歪めたかと思うと、あたしにがば、としがみ付き。
大きな声をあげて泣き始めた。


「こっ、こわかったよぉ! 真っ暗で、すごくこわかった!」

「よしよし。もう平気だから。安心しろ。な?」


背中を撫でさする。
怯えてるじゃないか。だいたい冒険しすぎなんだよ、お前は。


「考えなしに山道に入るんじゃない。毒のある虫とか、蛇とかいるかもしれないし、こんな風に予測できない危険もあるんだぞ」

「ご、ごめんなさ……いっ!」


うん、素直でよろしい。
わあわあと泣く体を、落ち着くまでしっかりと抱きしめた。


「さて、早く戻って足冷やさなくちゃな。イノリ、おんぶするから背中に乗って」


ひとしきり泣いたら、すっきりしたらしい。
ずるずると鼻をすすりながらも涙を止めたイノリに声をかけた。


「……やだ」

「は?」


さっきまで号泣していたくせに、あたしにしがみついたまま、頑固な返事を返してきた。
おいおい、今はそんなこと言ってられないでしょう、イノリさんよ。

「足、痛いでしょ? 冷やすなり湿布するなりしないと、ずうっと痛いままなんだよ。
もしかしたら骨にヒビ入ってるかもしれないし」

「いやだもん」


ふい、と体を離した。
とその拍子に腫れた左足を地についてしまい、うう、と呻いて蹲る。

痛いくせに。

ふう、とため息を一つついて、少年の頭に声をかけた。


「どうしてそんなこと言うのさ? 今も、みんなイノリを心配して探してるんだよ」