彼は、目の前にある本棚から一冊の本を抜き出し、あるページを開いた。 『不思議の国のアリス』 その本の最初のページ。 アリスが白ウサギを追いかける場面である。 少年は、そっとそのページを読み上げた。 壊れ物を扱うように優しく、懐かしそうに、愛しそうに……。 そして、少年は呟いた。 愛しい彼女の名前を――。 「やっと会えるね、アリス……」